相続対策としての不動産鑑定評価

(1)近傍、開発登録簿を閲覧することにより、開発道路による潰地を伴う開発事例を参考資料として掲載する、(2)標準画地と対象不動産の画地条件の相違による標準的使用と 最有効使用の違いを明確化する等してより説得力の高い調査報告書になるようバージョンアップしております。

相続税の基礎控除額の減額による課税対象の拡大

平成27年1月より相続税の課税計算における基礎控除額が減額されたことから、相続税の課税対象となるケースが増えています。

相続税=相続財産の合計額-基礎控除額
の基礎控除額が、
改正前 5000万円+(1000万円×法定相続人の数)
改正後 3000万円+(600万円×法定相続人の数)
となり、6割水準にまで圧縮されました。
この結果、例えば、相続人が妻1人、子供2人と仮定すると、
5000万円+(1000万円×3人)=8000万円
まであった基礎控除枠が、
3000万円+(600万円×3人)=4800万円
まで圧縮されてしまいました。
現預金、不動産、株、死亡退職金(死亡退職金額から500万円×3人=1500万円控除後の金額)、その他の財産などで、5000万円程度の財産がある方がなくなられた場合、相続税が課税されることになります。
例えば、弊社のある岐阜県下の、平成21年度の課税状況は以下のとおりですが、相続税の発生比率に換算すると、現在の全国平均4.1%が6%程度まで増加することが予測されます。

岐阜県下の税務署別課税状況

表1
税務署名 管轄地域 納付税額 被相続人の数 一人あたりの
納付税額
(千円)
相続人の数 金額
(千円)
岐阜北 岐阜市北部、山県市、瑞穂市、本巣市、本巣郡 637 3,753,713 256 14,663
岐阜南 岐阜市南部、羽島市、各務原市、羽島郡 557 3,049,366 236 12,921
大垣 大垣市、海津市、養老郡、不破市、安八郡、揖斐郡 412 2,877,286 174 16,536
高山 高山市、飛騨市、下呂市、大野郡 121 445,801 56 7,961
多治見 多治見市、瑞浪市、土岐市、可児市、可児郡 256 578,586 104 5,563
関市、美濃市、美濃加茂市、郡上市、加茂郡 163 918,758 66 13,921
中津川 中津川市、恵那市 54 176,605 23 7,678
岐阜県計 2,200 11,800,115 915 12,896

今後、団塊の世代が高齢者となり、富裕層を中心に相続対策が急務ですが、節税対策として生前贈与、生命保険・退職金による減額、賃貸共同住宅の経営などの他、相続財産のうち、大きなウェイトを占める不動産について、不動産鑑定士の活用により、減額を図る節税手法があります。
具体的には、「節税のための不動産鑑定評価」で紹介している時価評価の他、財産評価基本通達24-4「広大地」の判定を受ける方法があげられます。

当該規定は、平成16年1月以降適用されており、一定の基準を充たす「広大地」については、
広大地補正率 0.6-(0.05×地積/1,000㎡)
が、適用されます。(但し0.35が下限となります。)

広大地評価の適用を受けるためには以下の要件を充たす必要があります。

  1. 三大都市圏の市街化区域について、500㎡以上の地積、それ以外の市街化区域、あるいは、非線引でも、用途地域が定められている地域において、1,000㎡以上の地積がある。
  2. 開発によって潰れ地、すなわち、開発道路が生じるような、住宅分譲素地としての活用が、ふさわしい土地である。

これらの要件さえ充たしていれば、例えば、住宅地域内に、路線価20万円/㎡の1,000㎡の土地があったとき、通常の評価なら2億円ですが、「広大地」と判定されれば
0.6-(0.05×1,000㎡(地積)/1,000㎡)=0.55
を乗じて求めるので、その55%の1億1000万円と、評価額は大きく下がり、これに連動して相続税も大きく減額されます。

ただし、節税効果が大きいことから、
「旗竿分譲」が相当であり、潰れ地が発生しないので「広大地」に該当しない
と判定されたケースなど、否決事例も多くみられます。所轄の税務署による温度差は否定できないものの、税務署の認定が比較的緩やかな地域においては、法的に通らない、開発図面を想定して「広大地」判定をしているケースの発生が危惧されます。

表2
平成19年 北名古屋市師勝町 2件
平成22年 岐阜市東改田 1件
岐阜市尻毛 1件
岐阜市西改田 1件
平成23年 一宮市住吉町 2件
平成25年 岐阜市茜部 1件
岐阜市鶉 1件
美濃市段 1件
平成26年 岐阜市日置江 2件
岐阜市茜部 1件
各務原市神置町 1件
平成27年 あま市甚目寺町 2件
一宮市尾西 2件
岐南町平島 2件
笠松町中新町 1件
各務原市鵜沼三ツ池町 1件

弊社では表2のような実績がありますが、(1)そもそも分譲マンション、店舗などではなく、住宅分譲素地としての活用が望ましいのか、否かという市場性の側面、(2)開発許可の法的要件を満足しているかを綿密に判定した上で、(3)市場性・合法性を十分に充たした、「開発想定図」を添付するとともに、各要件に照らし、相続対象地について「広大地」に該当する旨を詳述した意見書を作成しています。

  • (1)については、販売中のものも含め、分譲マンションと、戸建開発の分譲地を、地図上にプロットしていき、調査日現在のマーケットにおいて、戸建分譲素地としての活用が、妥当であるか否かを判断した上で、市場性のある分譲計画の想定に留意しています。
  • (2)については、開発面積との関係で、幹線道路までの、「接する道路」(2号道路)の要件具備、開発区域が面する「接続先道路」(4号道路)に係るセットバック、開発道路幅員、転回広場の要否、1画地の最低区画面積、角切、緑地公園の配置等開発指導課の窓口への照会により、開発想定の合法性が担保されるよう、十分な配慮をしております。
  • (3)については、上記(1)・(2)を、綿密に調査した上で、開発想定図面の作成をおこなっており、上記最低区画面積のチェックなども、おこなっています。

事案によっては、担当の税理士さんにかわり、所轄の税務署への説明を行い、「広大地」判定に係わるお墨付きをいただいてから、意見書を提出しており、大きな節税効果をあげたケースもあります。

相続の対象となる土地の節税対策としては、「節税のための不動産鑑定評価」で紹介しているⅠ)時価評価もありますが、弊社では、担当の税理士さんと協議しながら、より適切な方法を選択していますので、土地をたくさんお持ちの地主さん、もしくは、その顧問先の税理士さんにおかれましては、お気軽にお問い合わせ下さい。