親族間取引では、「時価」が非常に重要になってきます。ここでいう時価とは、路線価でも路線価を0.8で割ったものでもありません。この時価を見誤ると、所得税や法人税を課税されるリスクが出てくるため、細心の注意が必要です。
時価評価をしなかった場合のリスク
資産を時価の2分の1未満の対価で譲渡した場合に、時価で譲渡したものとみなし、譲渡益に譲渡所得税が課税される。
時価と低額で譲渡された対価の差額は、法人が個人から贈与を受けたものとして法人税が課税される。法人の土地の取得価格は時価となる。
親族間取引の種類
- 個人と個人
- 個人と法人
- 法人と法人
親族間取引の問題点
親族間の不動産取引では自由に価格を決めることができてしまいます。そのため、親族間の取引は厳しい目で見られ、不適正な価格で取引すると税務上の問題が発生します。
土地の金額の種類
相続税では、相続発生時の時価で財産を評価する。法人税、所得税では、取引時の時価で評価する。といったように、すべての税法で「時価」が基本的なスタンスです。
公示地価
国土交通省が公表。一般の土地取引での目安となるほか、公共事業で民間から土地を取得する際の保証金の基準としても使われる。
基準地価
都道府県が公表。公示地価と同じ目的で使用される。
路線価(相続税評価額)
国税庁が公表。相続税、贈与税などの算定基準として使用される。公示地価の80%を目安に設定される。
※これに対して、法人税、所得税についても、取引時点の「時価」で評価するという考え方であるものの、相続税、贈与税でいうところの「路線価」が存在しない。法人税、所属税の時価評価においては、相続税の時価、つまり、土地でいう路線価、このことは一切受け付けないと考えたほうがいい。路線価を0.8で割り戻すという考え方も危険です。
親族間取引の具体的事例
親族間取引といっても色々なケースが想定されます。以下に、親族間取引の具体的事例をいくつか掲載します。
個人と個人
例1:土地のまま所有していると遺留分の問題が発生するため、その土地を渡したい長男に売却して現金化する。
例2:甲乙の共有不動産を乙が甲に売却し、甲の所有にする。
ただし、持分譲渡による市場性減価はできない。
個人と法人
例3:会社Bの代表者を務めるAが所有する土地建物のうち、建物のみを会社Bに売却する。
売却時には、建物時価の妥当性が問題になる。
売却後には、地代設定の妥当性が問題になる。
例4:法人Bの代表者を務めるAが法人Bにお金を貸している状態(代表者貸付)を解消するために、法人B所有の土地で代物弁済する。
例5:個人Aの不動産事業のために個人Aが建築したアパート、マンションなどの賃貸用建物を、借入金返済が進んで、ある程度年数の経過した時点で同族会社が購入して、建物所有型の不動産管理会社にする。
例6:建物所有している不動産管理会社(同族会社)が、個人オーナーの土地を借り受けしているケース。土地オーナーが亡くなり底地を買い取る(相続税対策)。
関連法規
所得税法
所得税法第59条(贈与等の場合の譲渡所得等の特例)
次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなす。
- 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)
- 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)
所得税法施行令第169条(時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲)
法第59条第1項第2号 (贈与等の場合の譲渡所得等の特例)に規定する政令で定める額は、同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の2分の1に満たない金額とする。
相続税法
相続税法第7条(贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合)
著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があつた時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があつた時における当該財産の時価(当該財産の評価について第三章に特別の定めがある場合には、その規定により評価した価額)との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与(当該財産の譲渡が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該財産の譲渡が、その譲渡を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
国税庁 タックスアンサー
No.4423 著しく低い価額で財産を譲り受けたとき
個人から著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合には、その財産の時価と支払った対価との差額に相当する金額は、財産を譲渡した人から贈与により取得したものとみなされます。著しく低い価額の対価であるかどうかは、個々の具体的事案に基づき判定することになります。法人に対して譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合に、時価で譲渡があったものとみなされる「著しく低い価額の対価」の額の基準となる「資産の時価の2分の1に満たない金額」により判定するものではありません。
また、時価とは、その財産が土地や借地権などである場合及び家屋や構築物などである場合には通常の取引価額に相当する金額を、それら以外の財産である場合には相続税評価額をいいます。
しかし、著しく低い価額の対価で財産を譲り受けた場合であっても、譲り受けた人が資力を喪失して債務を弁済することが困難であることから、その弁済に充てるためにその人の扶養義務者から譲り受けたものであるときは、その債務を弁済することが困難である部分の金額については、贈与により取得したものとはみなされません。
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