令和5年度 東北不動産鑑定士協会共催研究会 in 秋田

9.22秋田県で開催された東北連合会の研修会に参加してきました。

「建物等鑑定評価の精緻化のためのガイドライン(抜粋版)と題して、大和不動産鑑定株式会社 吉野川氏よりご講演いただきました。

元来、不動産鑑定評価制度は昭和40年代 日本が新幹線や高速道路等の大規模インフラを整備する頃に発足していることから土地補償と連動してきて発展してきた色彩が強く、地方では平成の初め頃から固定資産評価を中心に業界が動いており、ある意味、建物評価の精度は低いままに業界が推移してきました。

但し、平成の中盤以降、不動産の金融商品化が進み、建物評価、特に収益用不動産の評価が重要になってきました。

近年ではJAREAHASという建物評価のシステムも構築される等業界挙げて建物評価の精度向上に向けた取り組みが進んでます。

今回の秋田の研修では建築士であり、前職時代には鉄鋼業界での経験もおありになる吉川氏により建物の床面積の把握といった基礎的な事項に始まり、再調達価格、解体工事費、想定設計、造成工事、アスベストといった各分野の専門的講義を受けることができました。

そもそも建物の場合、共用廊下、階段、エントランス等共同住宅・老人ホームでは容積率の計算対象とならない部分があり、遵法性の検証において、容積不算入部分の正確な知識が必要になります。東日本大震災以降、昭和40~50年代の老朽化した団地の自家発電・貯水槽改修を進めるため延べ面積の合計の1/50以下について不算入とする法改正も行われたようです。

また、三面開放をみたしていないビルトイン車庫、タワーパーキング、配送センターの大庇については、登記簿面積に反映されない部分があることから注意が必要です。

建築費については、このところの建築費の値上がりへの対応を業界的にも迫られており、そもそもパワービルダーと大手ハウスメーカーとでは単価に倍半分の開きがあることから再調達価格の標準化という観点から競売評価等での取り扱いも難しい所です。

解体工事費については、特に、鉄骨造りの建物の外壁にアスベストが含有されている場合、法改正に伴い調査費用を含めた取壊価格が増加したことから今後も専門家の知識を取り入れながら評価実務への適切な反映を心がけたいところです。